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映画ブログ~鑑賞記録~

鑑賞した映画の紹介や感想です

映画「ムーンライト」青く密かに思い続ける少年の恋。アカデミー賞作品賞受賞(原題:Moonlight)

映画 洋画

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ムーンライト

皆さんは何色が好きですか?自分は青が一番好きなんです。会社で使う小物やシーツや布団の色、以前乗っていた車も青を選んだぐらい。このブログもPCで見ると分かるんですが青が基調です。

青って綺麗な色ですけどそれと同時にどこか儚い色でもあるんですよね。

青く燃える炎や、夜に光るどこか寂しげな街灯の色、青春だって青、青臭い、青二才。

そんな意味を内包するから好きになったわけではありませんが、そういう所も含めて好きな色です。

さて本題に戻って。

連休だったので昨日鑑賞してきました。作品賞なのに群馬だとプレビ伊勢崎でしかやってないんですね。LGBTというテーマが一般受けしないからでしょうか。しかも19:20~という時間帯。良い映画なのでもっと広く公開されて欲しい映画なんですが。

こっちは怖い系ですがたしかドント・ブリーズもそうだったような。

 

eiga-blog.hatenablog.com

 

落ち着いた良い映画でした。ゲイで黒人のシャロンという少年が少年期、青年期、大人と3つの年代を通してどういう人生を送ったのか。それを簡潔に淡々と描いてます。ジェンダーとは?という特別大きな疑問を投げかけるような作りにもなってない。しかしそのシャロンの密かな思いに胸を打たれる。そんな作品です。

 

2017年公開

監督 バリー・ジェンキンス

キャスト アレックス・R・ヒバート(リトル:少年期のシャロン

     アシュトン・サンダース(シャロン:高校時代のシャロン

     トレヴァンテ・ローズ(ブラック:大人になったシャロン

     マハーシャラ・アリ

     ナオミ・ハリス

     ジャネール・モネイ

     

トーリー

体が細くて背も小さくて引っ込み思案で大人しい少年シャロン。彼は「リトル」というあだ名を付けられ学校でいじめられる。そんな彼を唯一慕ってくれるのは同級生のケヴィン。

そのケヴィンに密かに思いを寄せるシャロン。でもまだ子供のシャロンは自分がゲイである事は知るはずもない。

ある日、同級生達からいじめに逃げるシャロン。その過程で薬物が売買されるような危険地域に迷い込んでしまう。

そこでフアンという売人の元締めの男と出会い、その出会いが彼の運命を大きく変えていく。

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ここからネタバレ

 

 

キャスト

 

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シャロン:リトル(アレックス・R・ヒバート

少年期のシャロン。この頃から同級生のケヴィンに密かに思いを寄せる。

しかし母親から愛情を一心に受けたい年齢であるはずなのに母親からは愛情を注がれなかった。普段物静かでほとんど喋らない。薬物に夢中な母親は彼をいつも傷つける。

 

 

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シャロン(アシュトン・サンダース)

高校時代のシャロン。見た目だけは大人びたが性格は内気なまま。レゲエ野郎のテレルにいじめられる。しかしケヴィンへの思いは今も変わらない。

 

 

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シャロン:ブラック(トレヴァンテ・ローズ

大人になったシャロン。運命とは皮肉な物。父親代わりだったフアンと同じ売人の元締めで稼いでいる。体つきこそ見違えるように変わったが、内面は少年時代の"リトル"そのまま。大人になった今でもケヴィンを忘れられない彼だった。

 

 

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フアンマハーシャラ・アリ

町の危険区域に迷い込んだシャロンを助け出し、以降父親のような存在になる。彼のシャロンに対する接し方、眼差しは本物の父親のようだった。しかしシャロンが青年期になった時は既に他界している。演技も素晴らしかった。

 

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テレサ(ジャネール・モネイ)

フアンの恋人。彼女もシャロンの良き理解者。フアン亡き後もシャロンを母親の様に支える。

 

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ポーラナオミ・ハリス

シングルマザーでシャロンの母親。薬物に依存しており常に情緒が不安定。薬欲しさに高校生のシャロンから金を巻き上げる始末。しかしそれが薬物。彼女も素晴らしい演技だった。

 

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ケヴィンジャレル・ジェローム

画像は高校時代のケヴィン。シャロンとは幼馴染で親友。バイである彼はこの時に海岸でシャロンとある秘密な夜を過ごす。しかし翌日"レゲエ野郎"のテレルのある遊びに巻き込まれ大切なシャロンを傷つけてしまう。

 

フアンとの出会い

いじめられっ子のシャロン。その日も彼はいじめっ子達に追いかけられ、町の子供が近づいてはいけない地域に迷い込んでしまう。そこは売人と客がクラックを売買するような場所。建物に隠れ何とかいじめっ子を振り切ったシャロンだったが、建物を壊し中に侵入しようとする大人に見つかる。

危機一髪かと思いきやその大人はシャロンを助け出そうとしていたのだった。彼の名はフアン。クラック売人の元締め。しかし彼は子供には優しかった。彼はシャロンに色々話しかけ食事をさせ家に送ろうと話す。

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 しかし何も喋ろうとしないシャロン。フアンは仕方なく恋人と住む自宅に連れて帰る。ケイトなら何か聞き出せると踏んだのだ。

その夜、3人で食事をしながら初めてシャロンは言葉を口にする。自分はシャロンという名で母親が居ること。しかし帰りたくないという答えだった。

 

翌日の朝、フアンはシャロンを自宅へ送り届ける。しかし母親のポーラの態度は冷たかった。帰りたくない理由を察するフアン。

この日からフアンとシャロンの擬似親子関係が始まる。

 

自分の道は自分で決めろ

ある日、学校から歩いてフアンの自宅に来たシャロンが二人に質問をする。

「オカマってなに?」

言葉を詰まらせるフアンとテレサ達。しかしフアンの答えは優しかった。

「ゲイが悪いわけじゃない。いつかわかる。だが今はまだ早い。今は」

フアンはそんなシャロンを海へ連れていく。泳ぎを教える為だ。

彼の体を支えながらフアンは言う。

「体の力を抜け。頭を支えているから安心しろ。身を委ねろ」

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支えられながら海に浮かぶシャロン。不思議な感覚だ。しかし父親が居ないシャロンには初めての体験だった。そしてクロールも教わり少しだけ泳げるようになったシャロン。そんなシャロンをファンは笑いながら優しく見つめる。

そして彼はシャロンにある事を伝える。

「自分の道は自分で決めろ。決して周りの人に流されるな」

 

フアンの秘密

そんな仲睦まじい彼等だったがある日その関係を壊すような出来事が起きる。子供ながらにシャロンはフアンが麻薬の売人だと気付いてしまうのだ。

「薬を売ってるの?」と質問するシャロン

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フアンは答えに困った。

しかし正直に話そうと決心をし、シャロンに自分は麻薬の売人であることを打ち明ける。

「お母さんにも売ってるの?」

少し間が空き「そうだ」と答えるフアン。

事実を彼の口から聞き、この複雑な関係に困惑したシャロンは泣き出して家から飛び出していってしまった。

残されるフアンとテレサテレサはフアンを慰めるが、彼は今にも泣き出しそうな表情でずっとうつむいていた。

ヤクの売人でしかも強面の男がうつむいて泣いている。それだけにとても悲しいシーンでした。

 

高校時代のシャロン

高校生になった彼は身長も伸び顔も大人びていた。学校で授業を受け学生時代を満喫しているようだ。

しかし現実は違った。相変わらず大人しくてゲイである事がバレている彼は同級生にいじめられる。子供は残酷だ。

シャロンの友達は今もケヴィンだけだった。

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学校でいじめられ家に帰るシャロン。しかし自宅に帰った所で気が休まる場所ではない。母親の薬物依存は更に進んでおり、テレサから貰ったお小遣いを取り上げるのだ。

既にフアンは他界しておりテレサはそれでもシャロンを家族の様に支え続けていた。そんな一縷の望みからもクラック欲しさにお小遣いを取り上げるポーラ。

もうシャロンはボロボロだった。自分はゲイで周りに理解されずいじめられ、家でも傷つけられ人生の生きる道を見失っていたに違いない。

薬物が家庭を壊し人生を狂わせていく。そんな唯一父親代わりだったフアンはその薬物を売っていた事実。しかしそんな彼ももう居ない。もう何もかもが嫌だった。

彼は家を飛び出しバスに乗る。行き先はファンに泳ぎを教えて貰ったあの海岸だった。

 

一夜の思い出

一人海岸で座り込むシャロン。そんな彼に思わぬ人物が声を掛ける。

「こんなところで待ち伏せしていたのか?」

友達であり思いを寄せるケヴィンだった。驚くシャロンだが内心嬉しかったのだろう、「お前こそなにしてる?」と声を掛ける。

「俺はここでヤクをやるんだよ」笑顔で返すケヴィン。

その後二人はマリファナを吸い良い気分に浸っていた。

波を打ち寄せる音が優しく響く。夜空には月が上り二人はいつの間にか、いやお互いが意識して見つめ合っていた。

ケヴィンもシャロンの思いは知っている。彼もまたシャロンの事が好きなのだ。ズボンのベルトを緩めてあげるケヴィン。

その夜彼は優しく"シャロン自身"を手淫し、シャロンは彼の腕の中で果てた。

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悲しい出来事

次の日、学校である事件が起こる。いじめっ子である"レゲエ野郎"のテレルがケヴィンにある遊びを持ちかける。

一人男を連れて来るからそいつが倒れるまでぶん殴って欲しいという"遊び"だった。実際にはいじめでしかない。ケヴィンは乗り気じゃなかったが断れず、テレルが責任を取る事を条件に承諾するのだった。

連れていく男を選ぶテレル。そして彼が選んだのはやはりシャロンだった。テレル自身が二人の関係に気づいていたかは定かでは無いが、シャロンがケヴィンに思いを寄せている事を知って居たのだろう。

殴る相手がシャロンだと分かって困惑するケヴィン。前日に二人は一夜を共に過ごしたばかりなのだ。

しかしそれ以上にテレルに逆らう事は出来なかった。

ケヴィンはシャロンを殴るしかなかった。殴られ倒れるシャロンは立ち上がる。

シャロンは何度もケヴィンに殴られた。

ケヴィンはシャロンを何度も殴りたくはなかった。倒れてくれればそれで"遊び"はおわりなのだ。しかしシャロンは倒れても倒れても何度も立ち上がった。鼻は折れ、口から血が流れ出てくる。

ついに立ち上がれないシャロンに対してレゲエ野郎達は容赦なく踏みつけた。

その状況を学校の警備員が気づきやっとシャロンは助け出されるのだった。

 

ケヴィンとの別れ

自宅に帰ったシャロンの顔は酷いものだった。氷を張った水で顔を冷やす。しかしそれと同時に"レゲエ野郎"のテレスに対する怒りが彼の中で沸々と湧き上がる。

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そして事件は起きた。

翌日登校したシャロンは教室で授業を受けるテレスに椅子で思い切り殴り彼に怪我をさせてしまう。人生で初めての仕返し。それ程彼の怒りは頂点に達していた。

しかしこれは教室での出来事。彼は警察に捕まってしまう。

両手に手錠をかけられパトカーに乗せられるシャロン。おそらくは少年院行きなのだろう。それを申し訳なさそうにケヴィンはずっと見つめていた。

 

 

ブラック:シャロン

少年院を出て大人になった彼は見た目も大きく変わっていた。体を鍛え、痩せ細っていたシャロンとは思えない体格。

高級車に乗り、ヤクの売人の元締めをして稼いでいた。

あの大人しくて屈折していたが優しい彼はどこに行ってしまったのだろう。そんな不安がよぎる。

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そんなある日、十数年振りにある人物から電話がかかってくる。その相手はあの日パトカーの中から最後に見つめたケヴィンだった。

ケヴィンはテレサからシャロンの番号を聞き出して電話したのだと話した。

「なぜ急に?」と質問をするシャロン

ケヴィンはあの日の事件を今でも後悔していた事や、今ダイナーで働いている事、そのダイナーでかかっていた曲を聞いてシャロンの事を思い出したのだと話した。

にわかに嬉しかっただろうシャロン。ケヴィンはいつか自分が働くダイナーに食事に来てくれと伝える。

その夜シャロンはケヴィンの事を夢に見て夢精をする。今でも彼の事が好きなのだ。

シャロンはケヴィンに会いに行くことを決めるのだった。

 

母親との再会

ケヴィンに会いに車を走らせるシャロン。久しぶりの地元だ。シャロンは彼に会う前に、薬物依存症患者が暮らす施設へ立ち寄った。

そこには母親のポーラが居る。どうやらやっと薬を断てたようだ。

久しぶりに母親と再会した彼は彼女が思ってた以上に老けてた事に気付く。

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若い頃は自分を蔑ろにし、男を連れ込んでヤクに夢中だった母親。しかし今目の前に居るのは痩せ細って老けたただの老年の母親だった。

子供の頃そのままに俯くシャロン

シャロン本当にごめんさい。許して」

涙を流してシャロンに謝罪するポーラ。それでもまだ彼は俯いていた。

しかし次の瞬間シャロンも同じように涙を流しポーラを抱きしめた。彼はきっと母親を赦したのだ。もっと早く薬を断つ事が出来てたならシャロンは少年院に行くこともなかったかもしれない。そうすればヤクの売人になることも無かっただろう。

しかし今二人はただ泣きながらお互いを抱きしめ合っていた。

 

ケヴィン

 母親と別れ車を走らせるシャロン。ついにケヴィンとの再会だ。心は踊る。その半面不安も有るだろう。

髪を整えシャツを羽織り、ケヴィンが働くダイナーに入る。シャロンはウエイトレス兼料理人としてそこで働いていた。

シャロンは一目でケヴィンだと気付く。しかし来る事を知らないケヴィンは入ってきた彼に気づかなかった。

シャロンに注文を聞きに来るケヴィン。そして気付いた彼の表情が変わる。

シャロンはうつむいたままだ。「幼い時と変わらないな。いつもお前は俯いていた。あの頃のままだ」

嬉しそうなケヴィン。

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二人は久しぶりの再会に話を弾ませた。シャロンは食事を奢ると言い「おすすめはシェフのおまかせ料理だ」「少し待っててくれ」と話しながらキッチンに消えていった。

しばらくするとケヴィンが自ら料理した食事を運んで来る。シャロンは早速それを口にし、だが一口テーブルにこぼしてしまう。それを拾って口に入れるシャロン

「見たぞ。拾って食う程美味いか。そうかそんなに美味いか」

冷やかすケヴィン。微笑ましい時間が流れる。

 

そしてケヴィンはシャロンの事を思い出した時の曲を店のジュークボックスから掛けた。

それは「Hello Stranger」という曲。ラブソングだった。

ケヴィンもあの日からずっと感情が燻り続けていたのだ。彼は離婚しているが息子が居る。そんな話をしながら二人は一緒にドライブした。

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 ムーンライト

ケヴィンの家はあの海岸のすぐ側にあった。ケヴィンは家にシャロンを招き入れる。久しぶりの二人だけの時間。あの日あの海岸で一夜を共にした以来。

そしてケヴィンはシャロンに告白する。

あの日以来思いを寄せたのはケヴィン以外に誰も居なかった事。そしてあの日以来、体を触らせたのはケヴィン以外いないという事だった。

 

自分はゲイでもジェンダーでもないけど、このシーンはジーンと来ました。一人の内気な少年が大人になるまで一人の人を思い続ける。そういう純粋な思いは例え同性でも心を揺さぶられる。隣に座る妻は泣いてました。そういうシーンなんだと思います。

 

そして時間は流れシャロンの願いは叶い、その夜ケヴィンの腕の中で彼は静かに眠るのでした。

 

月夜に佇む少年。その肌はいつまでも青く照らし出される。

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あとがき

 どうでしたか?黒人同士の同性愛を描いた作品。かつて見たことがない映画でした。

一つ分かったのは例え相手が誰だろうと一人の人を密かに思い続ける姿は心を揺さぶられるという事でした。

もし今そんな人が居たとしたら思いが叶うと良いなと思います。そんな気持ちにさせる映画です。

あなたはどこまで密かに思い続けられますか?