映画ブログ~鑑賞記録~

鑑賞した映画の紹介や感想です

R15+指定 映画「哭声/コクソン」真犯人と絶対にはまらないピース

哭声/コクソン

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2017年公開

監督 ナ・ホンジン

キャスト クァク・ドウォン

     ファン・ジョンミン

     國村隼

     チョン・ウヒ

     キム・ファニ

 

この映画観たことある人います?

最近、WOWOWのW座という番組で珍しく2時間45分の放送枠を設けていたので

録画した映画なんですが凄い映画でした。

ホラーとサスペンスと霊的な物とゾンビも盛り込んで

しかも真犯人が分からないようにしているという設定です。

でも、最後まで3度見返して真犯人に近づけたはず。

レンタルではR15+になっているようなので、ホラーが苦手な人は注意が必要です。

 

 

キャスト

ジョングクァク・ドウォン)

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谷城(コクソン)警察署の巡査長。

ヒョジンの父親。

ヒョジンが原因不明の病に侵され、娘を救おうと奔走する。

 

謎の日本人國村隼

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谷城(コクソン)という村に現れた謎の日本人。

彼が現れてから、村では謎の猟奇殺人事件が頻発する。

犯人は彼なのか?

村内では彼が女性を襲ったという噂や、彼は僧侶、または有名な大学の教授という噂が上がる

果たして彼は何者なのか?

 

イルグァン(ファン・ジョンミン)

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高名な祈祷師

近所のおばさんの紹介で村に現れる。

今回の事件の犯人は「あの日本人(國村隼)」だと霊視し、その日本人に対して”殺”を打つ。

”殺”を打つとはつまり祈祷によって対象を殺す事のようだ。

 

ヒョジン(キム・ファニ)

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ジョングの娘。

ある日突然原因不明の皮膚病に侵される。

村では既にその皮膚病から精神錯乱を発症し殺人事件が起きていた。

父親思いの優しい少女。

 

ムミョン(チョン・ウヒ)

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白い洋服を身にまとった謎の女性。

事件を全て目撃しているスペクター。

彼女が犯人なのか味方なのか最後まで分からなかったし今でも分からない。

 

ウリ健康食品の店主

おそらく村に毒キノコを使った健康食品を売ってしまったであろう店主。

雷に3度打たれても生きている凄い人。

その後どうなったかは不明。

 

真犯人は一体誰なのか?

この映画で一番関心がある点。

それは真犯人ですよね?

自分も一番気になるし、観た人誰もが考える事でしょう。

そして実際に映画のシーンを見返しながら考察してみました。

長いので時間があるときにでも読んでみて下さい。

 

毒キノコ説

これは精神錯乱を起こした村人の血液中からも採取されたという事実がある。

それが精神錯乱を引き起こした事も想像出来る。

しかしこの説が一番弱いのは、パク・チョンベがいくら毒キノコに侵されていたとしても

いや侵されていたと思う。しかし

頭に深々と農具が刺さっても動けるのは生物学的に説明がつかないし

ましてやそれを自分で引き抜いて、農具の棒をへし折る様は

やはり何らかの力が働いていると考える方が納得が行く。

そして身内だけしか殺さないというのも変だ。

そしてニュースで言われていたのは精神錯乱までで、猟奇殺人が行われているとは報道されていなかった。

谷城以外でも発生したはずだし、もっと大騒ぎになっているはずで

他の患者もいる病院に入院させるはずがない。

やはり谷城だけに何かあると考えるのが自然だろう。

 

謎の日本人説

劇中も途中までは國村隼が犯人だと思われていた。

彼は最後に聖書の一節を唱えるシーンで悪霊ではないと観客に訴える。(悪魔は聖書を唱えなどしない)

そして彼は祈祷師との祈祷対決?のシーンで家族を惨殺したパク・チョンベに対して

祈祷している。

この映画で一貫しているのは猟奇殺人とはいえ身内しか殺してない事。

他人は殺さないのだ。

そして家族を惨殺して使命を全うしたパク・チョンベに対して、國村が更に呪術を掛けるのは筋が通らない。

しかし國村が犯人ではない一番有力なシーンは、崖にしがみついて落ちた後のシーンだ。

彼は追われて逃げて、無様に岩陰にしがみつき

力尽きて落ちてその後、泣いたのだ。

果たして村人を呪って殺そうと考えるような人間が

逃げて泣くだろうか?

泣くよりも、己の計画を邪魔されたと感じ、怒りをあらわにするはずだ。

じゃあなぜ泣いたのか?

それはジョング達村人の理不尽な仕打ちに対して泣いたと考えるのが

一番筋が通る。

そしてこの時点で祈祷師とグルだという説も消える。

そしてその後、犯人である白い洋服の女性を見付け、追い

そしてまんまとその女の罠に掛かり、ジョングが運転する車に落ちたのだろう。

 

しかしその後谷底に突き落とされて生き返って洞窟に居るシーンは謎だ。

骨折一つしてなかった。

蘇って悪霊にでもなった?

助祭が精神錯乱して幻覚を見ていたのか?

哭声/コクソン 谷城/コクソン 國村/コクソン

洋題はThe Wailing=泣き叫ぶだ。

哭声も泣き叫ぶ。

國村の泣き叫び。やはり彼は村を救おうとしていたはずだ。

甦った後の事なら彼が犯人かもしれないが、それでは冒頭からの殺人の筋が通らない。

甦えるのは大分後半になってからだし、映画では祈祷対決も終わり、ヒョジンも一時回復していた。

 

 

 

 

 

祈祷師説

最初から怪しかった。

カネ目当てだったし、醤油のツボを割るシーンも自作自演だったかもしれない。

ジョング達が居酒屋で会った皮膚病を発症していたカーディガンを着た女も

その後祈祷師の元を訪れていた。

あの祈祷師が谷城の村人に対して呪術を行って荒稼ぎするつもりだったと仮定して

そこで邪魔になった國村に対して”殺”を打ったのではないか。

 

そして術は成功しなかったが、國村が死んだのを占いで確信し

再度ヒョジンに近付こうとした所を、白い女に邪魔をされた。

そしてスゴスゴとソウルに戻る途中で不可思議な現象に合い

白い女が邪魔だと思い始める。

そして犯人は白い女だとジョングを惑わせる。

しかしここで理解出来ないのは、ジョングに家に戻れと何度も説得した事だ。

祈祷師が犯人ならジョングを娘から遠ざけようとするはずだ。

ジョングも含めて娘に殺させようとしていた?

それなら筋が通る。

やはり彼が犯人か?

それを裏付けるかの様に、最後の場面で殺人現場で写真を撮り

他にも沢山写真を持っていた事も露呈していた。

彼が今の所一番有力だ。

 

白い女説

スペクターである彼女が一番関与しやすいし、顔も一人青白く

恐らくこの世のものではないだろう。

殺人を犯した村人の持ち物を着ていたりしているのが摩訶不思議で

直接的な意味も理解し難い。

祈祷師の言うところの、持ち物を集め、呪い、操っていたのかもしれない。

そう仮定すると最後のシーンでジョングに家に戻るなと言っていたのも理解出来る。

そしてあの謎の植物。

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ジョングが娘のヒョジンの元へ戻ろうとした時に、自宅門に掛かっている植物が枯れていったシーン。

一番最初の事件でジョングが触ろうとして触れなかったあの植物と一緒だ。

あの植物がなんなのか調べても分からなかったが、殺人が行なわれた家にある植物なのは間違いない。

悪い祈祷師を追い返したのも、自分の快楽を邪魔されたくなかったと考えれば筋が通る。

だがしかし、ジョングがヒョジンの元に戻ると決めた時に泣き崩れる意味が分からなかった。

泣いて惑わせて止めようとした?

いやしかし、彼女はその後も鬱らな表情で最後までへたり込んだままだったのだ。

笑っているなら別だが、これも筋が通らない。

やはり本当に村人を救おうとしていた霊だったのか。

そして彼女は直接的な言葉ではないが國村が犯人だと言う。

ジョングが國村を疑い結果殺してしまったからだと。

その復讐だと言いたいのか。

 

じゃあ、あの白い女は最初から村人を守ろうとしてて、その持ち物を集めていたのか?

じゃあ物語最初の犯人は誰だというのか?

國村?いやまだ彼は殺されていないし筋が通らない。

國村は最初から悪霊で、だから殺されても甦った?

しかしそれでは白い女の言葉と辻褄が合わないし、崖から落ちて泣くシーンも理解できない。

じゃあ、祈祷師?

もし彼が犯人なら祈祷師に罠を掛けたという白い女の言葉も理解できるし、

白い女はヒジョンを守ろうとして祈祷師を追い払ったシーンも理解出来る。

祈祷師が白い女が邪魔だと言うのも理解できる。

植物が枯れなければ祈祷師が罠に掛かっていたのかもしれない。

しかし白い女は國村が犯人だと言う。

正に迷宮入り、堂々巡り。

手詰まりだ。

 

エルキュール・ポワロならどう解決するだろう?

少なくとも今回記事を書いて整理できたのは

  • 蘇る前の國村は犯人ではない
  • 白い女も犯人ではないと思える

という事と

  • そして白い女の言葉を信じなければ祈祷師が真犯人だという事。

 

この映画は絶対にはまらないピースが多すぎる。

わざとだろうし、そういう映画なのでしょう。

それが話題を呼び、韓国で大ヒットした理由の一つであるのは間違いありません。

答えはない。

自分は、いやこの記事を読んだ殆どの人もキリスト教とは関係ないし

極力宗教と切り離して考察とも言えない解釈を試みましたが

結果はご覧の通りです。

そういう映画なんだと割り切るべきでしょう。

そしてこの記事があなたの頭の中の疑問点の整理に少しでも足しになったなら

いや、ならないな。

長々と読んで頂いてありがとうございました。

この映画、かなり面白いのでホラー好きなら絶対お勧めです。

初見の時「これは凄い映画だな」と思いました。

 

 

そして今回の最後は滝に打たれる國村隼さんでお別れです。

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後悔してもしきれない。取り返しがつかない。絶対に乗り越えられない過去の出来事。

許されない過去 

あの日、俺は飲み仲間と深夜まで大声を出して馬鹿騒ぎしていた。

自宅にある狭い卓球場でその仲間達とクソ騒いでいると

女房が腕を組み眉間にシワを寄せて部屋に入ってきた。

少し度が過ぎたようだ。

 

「ねぇ!静かにしてよ!上で子供が寝てるの」

 

「ごめん、悪かった。」

 

「ねぇ、バカ連中を追い出して」

「分かったよ。帰ってもらう」

 

女房が部屋から出ていった後「おっかねえな(笑)」と俺が言うと仲間達は大笑いしていた。

しかしそこにまた女房が戻って来る。

 

「いい加減にして!クソ夜中よ!クソ身支度して出ていって!」

 

彼女は激怒し、それを聞いた皆は凍りついていた。

仲間は言う

「身支度?」

「女房は本気じゃない」

 

俺はその後、仲間を見送りまだ腕組みをして怒っている女房にジョークを飛ばしたが

彼女は一言

「くたばれ」

と俺に言い、ベッドに入っていった。

 

そのあと俺は2階に居る3人の子供達の様子を見に行き、寝ているのを確認すると

1階の暖炉に火を灯し、薪を焼べた。

2階の子供部屋は凍りつくように寒かったし、乾燥すると頭が痛くなるという女房の言葉を思い出したからだ。

そしてさっきまで騒いで興奮してたせいもあってか、目も冴えていたからソファーでTVを観ることにした。

しかしビールが無い。俺はコンビニに買いに行った。

かなり酔っていて運転する気になれず、徒歩だと片道20分掛かるが

ビール欲しさにトボトボ一人で歩いて買いに行った。

 

途中で暖炉にスクリーン*1をし忘れたかもしれないと気付いたが、酔っていた俺は

「まあ、いいや」

と思いそのままコンビニに向かった。

コンビニでツマミとビールを買い込むと、凍えるような外気の中で

早く暖まりたいという思いが帰宅の歩みを早めた。

 

しかしここで俺の人生は一転した。天国から地獄へと突然突き落とされた。

あの日から俺は死人になり、心は死んだまま生きる屍となった。

 

自宅周辺に近づくと、焦げ臭い匂いが周辺から立ち込め

スクリーンをし忘れた暖炉が頭をかすめた。

俺は走った。

しかしソレを目撃した俺の足は震え、心臓はこれ以上無いほど破裂しそうに鼓動し、全身から汗が一気に吹き出した。

我が家全体から激しい炎が舞い上がっていた。

 

すでに消防隊が駆けつけ、消火活動を行っていた。

俺は我が家が燃え盛るのをボーっと見つめていた。

現実とは思えなかった。

何か悪い夢でも見ていると思いたかった。しかし女房はそんな俺とは対象的に

 

「中に子供が居るのよ!」

 

と叫び、取り乱し、家に飛び込もうとしているのを消防隊員に取り押さえられていた。

 

翌朝、全焼した自宅から幼い娘2人の焼死体が見つかった。

死体袋に入れられ運ばれていく。

一番小さかった乳飲み子の息子は燃え尽きて灰になってしまったのか

遺体は見つからなかった。

 

俺はそのあと警察に連れて行かれ、全て事情を話し、犯罪性はないと判断されすぐに解放された。

おかしな話だ。子供3人殺していて解放だなんて。

女房は一生俺を許さないだろう。そして俺自身も一生許さないだろう。

俺は自殺を図った。

警官に後ろから近づき、素早くその銃を抜き取り、こめかみに銃口を当て引き金を引いた。

しかし銃は発砲しなかった。

安全装置が働いていたのか、そもそも弾が装填されていなかったのか。

二発目を撃とうとする前に警官達に取り押さえられた。

 

 

その日から俺は町中の噂になった。

俺を見る目は同情と軽蔑が混ざり、死んだ俺の心を棒で突っついた。

俺の名前を知らない住民は誰も居なかった。

顔を見れば「あの、◯◯か?」

と皆が噂した。

 

女房の心もその日から死んでしまった。

起こった現実と、原因が俺にあることをなじり

二人は生きながら死んでいて、ただ傷つけ合うだけの

夫婦ですらない生き物だった。

 

町には頼れる大好きな兄貴もいたが、俺は女房と別れ、その町を出た。

今は団地の便利屋として働き、ただ生きている。

 

あの日から俺の顔から笑顔は消えたがどうでも良かった。

人とは極力関わりたくないし、自分自身のことなどどうでも良かった。

アイスホッケーで言えば退場になってベンチで試合終了を待つだけ。

こんな人生生きる意味などあるのか。

子供達にしてしまった取り返しのつかない事をどう償えばいいのか?

死んであの世に行ったとして、どう謝ればいいのか?

誰も教えてくれない。

 

 

しかしそんな日々を送る俺に、ある日病院から一本の電話が入った。

それは元々、心臓に病気を抱えていた兄が倒れたという内容だった。

そしてその日から俺の人生は、ほんの少しづつ変化を始めた。

 

感想

さあ、今回はちょっと趣向を変えて主人公から見たあらすじで紹介してみました。

これは

マンチェスター・バイ・ザ・シー

という映画の主人公の過去です。

知っている人は途中で気付いた事でしょう。

あらすじの通り、彼は最初から一切笑わないんですね。

女性から、あからさまに言い寄られても眉一つ動かさず拒絶する。

それ程彼の心は壊れてしまっています。

そしてその電話を機にある出会いが二人を近づけ

主人公である、リー・チャンドラー(ケイシー・アフレック)を少しづつ変えて行きます。

彼はこの作品で主演男優賞を取りました。

女房役のミシェル・ウィリアムズも凄く良い演技です。助演女優賞あげたいぐらい。

そのシーンも見どころです。

 

「乗り越える事など出来ない。つらい」

 

そう主人公は語ります。

乗り越えられない過去。

取り返しがつかない過去。

心が壊れてしまうような過去。

そんな過去が題材となった映画です。

雰囲気的にはスリー・ビルボードに似てるかな。

脚本賞も取っている作品なのでシナリオや台詞回しも凄く良いです。

 

誰にでも思い出したくない過去があると思います。

時間とともにそれは薄まっていったり、運が良ければ昇華されたり

そうでなくても普通はただそれにをして生きていくだけです。

向き合ってもどうにもならない事もあります。

蓋をしているだけなので、何かの拍子に思い出して

また自身を苦しめる時もあるでしょう。

 

この映画は主人公のリー・チャンドラーという心が壊れてしまった主人公を

他人事として見守り、そして境遇を想像する。そんな映画です。

 

 

今回は記事タイトルに映画のタイトルを入れてないので、検索には一切引っかからないでしょう。

でもこの記事を読んで、あらすじを見て気になった方には是非勧めたい。

是非見て欲しい映画です。

そして

「ああ、観て良かったな」

と思って貰えて、記憶に残る作品になったら良いなと思い記事を書きました。

 


映画『マンチェスター・バイ・ザ・シー』予告編

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

*1:スクリーンとは暖炉の前に置く衝立のこと。薪が爆ぜたり、床に燃え落ちるのを防いでくれる