映画「パッセンジャー」恋に落ちる?落ちない?船内にはたった二人だけ(原題:Passengers)
パッセンジャー
2016年公開
監督 モルテン・ティルドゥム
キャスト ジェニファー・ローレンス
3/24本日公開の「パッセンジャー」早速観てきました。ユナイテッドシネマ会員1000円の日なので劇場も混んでましたね。春休みだし、ちょうど「SING/シング」が公開中なのもあったからでしょう。
これ原題はPassengers(パッセンジャーズ)なんですね。アン・ハサウェイ主演の「パッセンジャーズ」と被るから邦題を「パッセンジャー」にしたのでしょう。ややこしい。
監督はノルウェー出身のモルテン・ティルドゥム。ナチスの暗号機「エニグマ」を題材にした「イミテーション・ゲーム/エニグマと天才数学者の秘密」の監督なんですね。
キャストは「ハンガー・ゲーム」のジェニファー・ローレンスと「ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー」「マグニフセント・セブン」のクリス・プラット。
バーテンダー役に「アンダー・ワールド」のマイケル・シーン。甲板長役で「マトリックス」のローレンス・フィッシュバーン。
何故かほんのちょい役(まじでほんの少し)で「ゴッドファーザー」「オーシャンズシリーズ」のアンディ・ガルシア。
ストーリー
地球からの惑星移住者を乗せた宇宙船アヴァロン号。冬眠ポッドで眠る乗客5000名、乗組員258名
自動操縦で目的地の惑星ホームステッドⅡまで120年。
艦前方のシールドにエネルギーを集中させながら航海を続けるアヴァロン号。しかしデブリ帯を進む中、トラブルが起こる。
巨大な隕石に衝突し船内にダメージが発生。自動で再起動するもシステムエラーは回避されず、一人のエンジニアの冬眠ポッドが故障して開いてしまう。彼の名はジム・プレストン。
航海は残り90年。ここから彼の孤独な旅が始まる
ここからネタバレです。
キャスト
オーロラ・レーン(ジェニファー・ローレンス)
今回のヒロイン。美人な作家でジャーナリスト。彼女の目的は惑星移住ではなく、冬眠カプセルを利用して移住惑星先から地球へ戻り、その航海を執筆する事にあった。しかしジムによって彼女のカプセルは勝手に開けられ目を覚ましてしまう。
ジム・プレストン(クリス・プラット)
職業はエンジニア。冬眠カプセルの故障で最初に目覚めてしまう。地球では既に技術の発達でエンジニアを必要としていない時代になっており、移住先のコロニーならその技術を活かせると移住を決意。カプセルの中のオーロラに恋をしてしまう。
アーサー(マイケル・シーン)
船内唯一のアンドロイド。(下半身丸出しの)バーテンダー。会話は可能だが所詮はプログラム。ジムの秘密をオーロラにバラしてしまう。彼に善悪の判断は無い
ガス・マンキューゾ(ローレンス・フィッシュバーン)
258名の乗組員の一人で甲板長。彼も度重なる船内のシステムエラーでカプセルが故障し目を覚ましてしまう。しかし冬眠カプセルの故障でその時すでに臓器不全に陥っており余命わずかの宣告を受ける。
ノリス船長(アンディ・ガルシア)
映画の最後に数秒だけの出演。セリフもなし。キャストを見なければ気付かない人も多いはず。でも船長。
孤独との戦い
一人目覚めたジムが残り90年間孤独であると認識するまでそれ程時間は掛かりませんでした。唯一会話出来るのはアンドロイドのバーテンダーであるアーサー。
しかし彼に善悪や人間の感情を理解する能力はなく、孤独に変わりはありませんでした。
何の目的も希望なく残りの人生を死ぬまで一人船内で過ごす。想像も出来ません。
最初は身なりにも気を使ってた彼ですが、最後には髪も髭も伸ばし放題、下半身には何も身に着けず、一人自殺を考えるまで追い込まれます。しかしそんな彼ですが、カプセルで眠るオーロラに恋をし、禁断の方法を思いつくのです。
禁断の果実
その"禁断の果実"を目の前にして彼は実行に移します。勝手な話しです。彼女の命と夢と人生を奪い自己の孤独感を満たす。しかし当事者になったとしたらどうなるのでしょう。自分ももしかしたらカプセルを開けてしまうのかもしれません。
開けた後、事が上手く進んで彼女と親密な関係になれればまだ良い。しかしそうではなかったら?
船内には二人居るのに孤独感を味あわなければいけないというのは更に不幸でしかありませんし、彼女への罪悪感で押しつぶされてしまうでしょう。起こしてしまったからにはもう冬眠させる事は出来ないのです。
あなたならどうしますか?
恋に落ちる二人
ジムが故意にカプセルを開けた事を知らないオーロラ。ジムが1年半孤独だった事、惑星到達まで残り89年ある事、一度開いた冬眠カプセルは入眠状態にはならない事を彼から知らされます。
しかし彼女はその現実を徐々に受け入れ前向きに生活し始めます。
二人はダンスやバスケやデートを通じて距離を縮めていきます。
宇宙服を着ての船外デートはこの作品の美しいシーンの一つです。
そして二人は恋に落ち、ついに男女としての関係を結びます。最愛の人と船内で二人きり。うらやましいぞこの野郎!と叫びたくなる気持ちを抑えます(抑えました)
深刻なダメージ
しかしここは映画の世界、禍福は糾える縄の如し。脚本家のさじ加減。幸せは続きません。
ある日バーテンダーのアーサーが、オーロラを目覚めさせたのはジムの仕業だと話してしまいます。彼に悪気はありません。アンドロイドに善悪の判断はつきません。プログラム通りに動き、話すだけです。
それを知ってしまった彼女はパニック状態になります。最愛の人が自分の人生や夢や命までも奪った張本人だった。混乱して当然です。
「人殺し」と詰る場面もあります。
しかしそれと同時に水面下で船内のシステムエラーは深刻な状態に陥っていきます
お掃除ロボット"ルンバのような機械"が15台も壊れ、ドアが開かなくなったり、残った冬眠カプセルもエラーを吐き続けます。そしてついに船内に3人目の登場人物が現れます。
甲板長ガス・マンキューゾ
カプセルの故障で目覚めた彼は惑星コロニーに到達するまで残り88年と知らされます。最初は「冬眠酔い」だと思っていた体調が実は全身の臓器不全だと分かり、治療方法はなし、余命も残りわずか。自動プログラムで診断後に出されたのはただの鎮痛剤でした。
しかし彼は責務を果たすため、艦橋やその他開かない扉を開けられる自分のIDをジムに渡し「制服を着ているとモテるんだよ」という言葉を最後に後を託します。
システムエラーの真相
エラーの真相を探る二人は渡されたIDを使い船内をくまなく調べ、そしてついにその原因を突き止めます。
ジムが目覚める前、巨大な隕石と衝突した際に砕けた隕石が船内の壁を突き抜け、エンジン部であるリアクターのハードウェアに直撃していたのです。
すぐにハードを交換する二人ですがリアクター内に溜まった余分な熱量を船外に放出しなければなりません。
故障からか内側から操作してもその熱を吐き出すドアが開きませんでした。
残る方法はたった一つ、誰かが船外にでて外側からレバーを操作するしかありませんでした。
ジムの覚悟
役割は決まりました。船外に出てドアを開ける役目はジム。ドアが開いたら熱量を放出させるのがオーロラ。一度はジムから心が離れてしまったかにみえたオーロラですが、彼が命を落とす危険が迫ると残っていた感情が蘇ります。
吊橋効果?いえいえ、彼女はあの後もずっとジムが好きだったのです。
ジムは防壁用のドアを溶断して外し、それをシールド代わりにする事を思いつきます。ドアから離れた状態ならそのシールドで放出された熱を防げるという算段です。
そしてそれを片手に「必ず戻ってくる」と言い残し彼は宇宙服を身に着け一人船外へ出ていきます。
自動で閉まってしまうドア
5000名の生命とオーロラの命は彼に託されました。テザーケーブルを装着しついにドアの反対側に辿り着きます。
しかし彼がドアを操作するとレバーを捻ったままにしないと開きっぱなしにならない事実が発覚します。
レバーは自動で戻ってしまうので彼がドアに近づいたままレバーを捻り続けなければならない。ドアから放出される熱量は甚大です。宇宙服と手に持つシールドが耐えられるか。しかしリアクター内にどんどん熱は溜まっていき、自爆寸前。迷ってる時間はありません。彼はドアを開けオーロラに「今だ!放出しろ!」と叫びます。
炎に耐えろ
このまま放出すれば彼の命が危ない。しかしこのままでもエンジンは自爆を起こしてしまう。何度も迷ったオーロラですがついに熱を放出させるボタンを押します。
ドアは開きジムの目の前で大量の炎がドアから吐き出されます。ジムはシールドを盾にし耐え、宇宙服ももったかに見えました。
しかしその瞬間、磁力で張り付いていたジムのシューズは船体から離れ、彼の体は船外に吹き飛ばされてしまいます。
彼の体には船体から伸びるテザーケーブルが付いています。しかしみるみるケーブルの残量は減っていき、限界が来た時になんとケーブルが切れてしまうのでした。
極寒の宇宙
宇宙空間に放り出された彼が船内に戻る術はありません。宇宙服には穴が空き、服内の気圧もどんどん下がり続けます。ヘルメット内には氷がみるみる侵食し、ついにジムの体はピクリとも動かなくなりました。
そのケーブルを掴め
そのころオーロラはジムが船外に吹き飛ばされた事を知ります。彼女に迷いはありません。すぐに宇宙服を身に着け、彼を助けるべく彼女もまた極寒の宇宙に身を放り出すのでした。
ジムに近づくオーロラ。どんどん彼との距離が縮みます。あと一息。もう少しでジムの手を掴めそうな瞬間、オーロラのケーブルの長さに限界が来てしまいます。
もう少しなのに!あと数メートル。
その時彼女の目に飛び込んできたのが彼の切れたケーブルでした。そのケーブルは彼に繋がっています。
これで助かる!
彼女はそのケーブルを掴み、ついにジムをその手に抱きしめるのでした。
ジムの命
船内に戻った二人ですが、ジムの様子がおかしい。息をしていません。彼女はジムを抱き起こし医療用カプセルまで運びます。
診断の結果は"死亡"でした。極寒の宇宙に放り出され、宇宙服に穴が空いていた為に心配停止状態になってしまったのでしょう。愕然とするオーロラ。
しかし諦める彼女ではありません。蘇生プログラムを甲板長が残したIDを使って何とか呼び出しジムに蘇生措置を施します。
「ジム!生きて!」
泣きながら叫びます。
幾重にも蘇生措置を施されたジムの体。しかし全く動きません。
ダメだったのかと思った瞬間、ついに彼が目を覚ましました!
そして抱きしめ合う二人。
「キスで起こしてくれたのか?」そう話すジムに涙とキスで答えるオーロラ。
言葉は何も必要ありません。
贈り物
その後は船内のエラーで壊れたアーサーも無事に戻り、また二人に幸せな時が戻ります。
宇宙船アヴァロンはその後も88年間航海を無事に続け、ついに移住先の惑星ホームステッドⅡに辿り着くのでした。
ジムとオーロラは?
エンディングでは目覚めた乗組員と乗客がオーロラが書き残したメッセージを見つけます。
船内には緑が溢れ鳥もさえずり彼女達が残した"贈り物"が彼らを癒やす事でしょう。
ジムがもしあの時、オーロラを故意に起こさなかったら?
恐らく結果は違うものになっていたのでしょう。
あとがき
いい映画だっなと思います。特に船外デートとジムがシールドで炎に耐える映像は凄かった。シナリオも良く練られてるなと感じました。ジェニファー・ローレンスの水着姿も拝めます(豆知識)
恋愛SF映画。デートの目的地にいかがでしょうか?