映画ブログ~鑑賞記録~

鑑賞した映画の紹介や感想です

ネタバレあり 映画「昼顔」胸のずっと奥深くで優しく光る物

昼顔

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2017年6月10日公開

監督 西谷弘

キャスト 上戸彩

     斎藤工

     伊藤歩

     平山浩行

 

 

決して、もう二度と。

せめて、もう一度。

 

なぜか後ろに座る観客

ドラマは全く見たこともなかったんですけど、同僚が面白かったというので休日の昨日行ってきました!(もちろん一人で)

会員以外は割安料金でもない日にも係わらず結構入ってましたね。やっぱり女性が多かった。昼ドラの続編だからですからね。

男性客は自分も含めて数える程しか居ませんでした。

そこで面白い発見があったんですけど、席に座る人が皆後ろに座るんですね。

普段ではあり得ない中間よりも後ろに殆どの人が座ってました。中間がスカスカな状態ってあまりないんですよ。

オッサンが前と中央に陣取り、女性客が後ろに陣取るという布陣。やはり後ろめたさみたいなものが心理的に働いてるのだとしたら?考え過ぎですね。

 

さて肝心な映画の感想ですがかなり面白かった。前述の通り、全くドラマ編は見てないんですがそれでも感情移入できる作りになっていて

冒頭の誓約書の記述は導入部としては凄く良い仕掛けだと思いました。

内容は不貞な恋なわけですが一部を切り取ると美しく感じるのは何故でしょうか?

してはいけない恋。でも止められない思い。自制と葛藤と復讐。

そんな作品です。

 

あらすじ

あの事件から3年、裕一郎そして夫とも別れ全てを失った紗和は三浜という海沿いの地域に一人移り住む。

海沿いの飲食店でパートで働き生計を立て、孤独を噛み締めながらひっそりと暮らす。

しかしある日、一枚のチラシに北野裕一郎の名前を見付けてしまう。3年間一度も思い出す事の無かった男の名。

もう二度と話さない、近づかない、連絡先も交換しないと誓約書にまでサインしたのに

その名前は消えかけていた紗和の焔を呼び起こしてしまう。

そして紗和は裕一郎が出演する講演会に足を運んでしまうのだが、、、

 

 

 

さあ、ここからは完全なネタバレです。公開から日も経ってるので今日は思いっ切り書けるぞ!

 

 

 

 

 

 

 キャスト

木下紗和上戸彩

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笹本紗和改め木下紗和。裕一郎、そして夫とも別れ今は三浜という海沿いの地域に一人移り住む。友人や職場全てを失い誓約を誓ったはずの孤独な未来が、彼女の望む未来に変わっていく。

 

 

北野裕一郎斎藤工

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あの一件後、妻の元に戻り高校教師を辞め大学の非常勤として働き日常を取り戻した裕一郎。しかし男とは女々しいもの。きっと紗和の事をずっと思っていたに違いない。一方で女々しく、もう一方では一途とも言えるその不貞な二律背反な役にハマっていました。

紗和が精魂込めて作った手作り弁当には目も暮れず、百葉箱を磨いて自慢するシーンは微笑ましい。

 

北野乃里子伊藤歩

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裕一郎の奥さん。笑ってて怖い事を考えてそうな人。ていうか怖かった。そういう意味でも良いキャスティングなのでしょう。

七階から飛び降りても、車で崖からダイブしても生き残る不死身な奥さん。

夫が死んでも尚笑うその表情は倒錯的で男には理解し難い感覚。

 

杉崎尚人平山浩行

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紗和のパート先のオーナー。

一見飄々としているが、妻に不倫され捨てられた過去を持つ。

社会的面子を潰され昇進を諦めた彼は会社を辞め、三浜の飲食店オーナーになる。

紗和にアプローチを掛けるが、不貞行為の末流れ着いた紗和の過去を知ると態度を変え

紗和の過去を周囲にばら撒く。

そういう意味では一番女々しい役どころだった。

 

 

感想

冒頭でも書きましたが、すごく良い作品だと思いました。

紗和と裕一郎の一挙手一投足が彼等の内面をよく表現していて、不貞行為なのに美しいとさえ感じてしまう。

冒頭で紗和は裕一郎が講演会に出演することをチラシで知るんですが、そのチラシをクシャクシャにして一度は窓から放り投げるんです。

でも結局家から出てきてしまって、その捨てたチラシを拾ってしまいます。

その拾った後のガックリと肩を下ろし足取りがヨタヨタと本当に力の無い足取りで家に入っていくんです。

全てを失って、私はあんなに辛い思いをしたのにまだ忘れられないのかという絶望感。きっとその晩は眠れなかったはず。胸が痛くなるシーンです。

翌日、講演会に出かける用意をする紗和は打って変わって嬉しそうに化粧をし、おめかしをしてそのまま出かけるのかと思いきや

その自分の姿を見てハッと気づきます。

そしてそれでも講演会に生きたい紗和は地味な服装に着替え直し、目立たない様にするのですが

そんなシーンでも微笑ましいと思ってしまいました。

そして彼を一目見るべくホタルの生息地に向かい、裕一郎と会えなかった紗和は落胆するのですが

運良く帰りのバスから彼の姿を見かけると

自分自身の気持ちが蘇ってしまった紗和は

大きな声で「北野先生!北野先生!」と何度も呼んでしまうんです。

3年間一度も思い出さなかった名前。決して呼んではいけない名前。

そしてその声に気付いた裕一郎は躊躇する事無くバスを走って追いかけるんです。

彼もまた同じようにずっと忘れられなかったんですね。

 

鑑賞しながらずっと考えていたのですが、彼らの行動は凄く純粋で心を打たれてしまって。

そういう部分がこの一連の作品の人気の秘密なのでしょう。

勿論そういう行為を否定する台詞も出てきてハッとさせるのですが

紗和と裕一郎が止まらないように、感情移入も止まりませんでした。

不貞の裏には杉崎や乃里子ような被害者がいる事実と

その外で惹かれ合って逢引を重ねてしまう紗和と裕一郎

この映画が杉崎や乃里子に焦点を当てる作品なら、もっとドロドロとしていて

善悪を観客に問う内容になり、素直に楽しめなかったんじゃないかなと思います。

 

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再会したばかりの彼等の距離感は物理的には離れてるんですが、ずっと惹かれ合っているんですね。

裕一郎が顔を拭こうとすると紗和はハンカチを用意して渡そうとするんですが、そこで自制して石の上にそっと置きます。

このもどかしさが凄く分かるのは一体なぜなんでしょう?

紗和を愛おしいと感じてしまうのは男の本能なのでしょうか?

やっぱり理屈では屈服させる事が出来ない何かがあるからなのでしょうか?

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結局この逢引も乃里子に知られてしまって、また彼女を深く傷つけてしまう裕一郎ですが

物語は止まる事なく紗和と裕一郎を強く結びつけます。

途中、杉崎がちょっかいを出すのも彼等にとっては成就への軽い障害でしかありません。

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裕一郎は妻の乃里子と無事籍を外すことになるのですが、彼は最後まで紗和に「好き」と言えずに死んでいくんですね。

 

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乃里子は奪った紗和に復讐するため、裕一郎を渡したくないが為に車で投身自殺を計ります。

車で崖から飛び降り、裕一郎は即死。乃里子は骨折程度で生き残ります。

なんという強運!彼女の目論見以上に結果は転びます。

裕一郎を失い絶望した紗和は電車の線路で横になって自殺を計ろうとします。

裕一郎の元に自分も行きたいと思ったのでしょうか。

しかし見上げた夜空には天の川が流れ、彼女の左手の薬指には裕一郎との思い出のホタルが止まり

婚約指輪の様に浩々とその薬指を照らします。

あえてロマンチックに言えば、死んだ裕一郎がホタルになって生まれ変わり

彼女の自殺を思いとどまらせたのでしょう。

紗和は身を起こし自殺を止め泣き崩れます。

ここで実は泣いてしまいました。

隣に誰もいない席で良かったなと思いました。

ハッピーエンドとはなりませんでしたが、紗和は乃里子には実現することが出来なかった事

裕一郎の子供を身籠るという未来が与えられます。

不貞の映画ですから良い落とし所だと思います。

しかしそれ以上に紗和にとって救われる結果で良かったなと心底思いました。

 

人は必ずしも一番望む相手と一緒になれない事がしばしあります。

理由は様々で、それでも今目の前にある日常を大切にし

僅かな後悔や思いは胸にしまって皆それぞれ生きていくのでしょう。

しかしそれでもその思いはホタルの幼子の様に川のずっと奥深く、誰が知る事もない見つかる事もないない場所で

いつまでも浩々と優しく照らし続けるのかも知れません。

 

さあ、映画「昼顔」

じんわりと心に残って配偶者には勧め辛い映画。

行くなら一人。そして隣には誰もいない席がお勧めです。

 

 

昼顔

昼顔

 

 

 

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