映画「スプリット」分裂した24の人格。闇は闇を引き寄せる(原題:Split)
スプリット
2017年公開
監督 M・ナイト・シャマラン
キャスト ジェームズ・マカヴォイ
アニャ・テイラー=ジョイ
ジェシカ・スーラー
ヘイリー・ルー・リチャードソン
ストーリー
ヒロインのケイシー。彼女はある日友人クレアの誕生日パーティーに招待される。一人ぼっちで楽しむ様子もないケイシー。彼女はどうやらクラスで浮いているようだ。
そのケイシーとクレアそしてマルシアを加えた女子高生3人はクレアの父親に送ってもらう帰り道にある男に誘拐され、地下に監禁されてしまうのだが、、、
「スプリット」とは割れるとか分割するという意味らしいです。
休日を利用して昨日鑑賞してきました!プレビ伊勢崎ガラッガラでしたね。まあいつもガラッガラなんですけど。その分映画に集中できて良いんですけどね。
さて、肝心な内容なんですが思ってた通り全く怖くなかった映画でした。残念。怖いの苦手な女性でも全然イケるんじゃないかな。面白いかどうかは別として。
M・ナイト・シャマランらしいといえばらしい作品なんですが、まあ感想は最後に。
ここからネタバレ
キャスト
ケヴィン(ジェームズ・マカヴォイ)
多重人格者。幼少期の母親からの虐待から身を守る為に解離性同一性障害(DID)を患う。23の人格を持っており潔癖症、社交的、デザイナーから女性や子供まで多種多様。最終局面では24番目の人格「ビースト」が現れる。
ケイシー(アニャ・テイラー=ジョイ)
今回のヒロイン。学校では浮いている高校生。幼少期に父親を亡くし実は彼女も心に闇を抱えている。
演技は素晴らしかった。ジェームズ・マカヴォイよりもむしろ彼女の演技の方が記憶に残る。
左マルシア(ジェシカ・スーラー)と右クレア(ヘイリー・ルー・リチャードソン)
普通の女子高生。クレアは天井から脱出を試みるも失敗し別の部屋に監禁される。マルシアもケヴィンを椅子で殴り脱出を図るがこれも失敗し、同じく一人別部屋に監禁されてしまう。最後は「不純」な生贄としてビーストに腹を食われてしまう。(かわいそう)
ケヴィンの心理カウンセラー。23の人格を把握しており彼をつぶさに観察する。ケヴィンからの緊急のメールと誘拐のニュースを結びつけていればもしかしたら悲劇は起こらなかったかもしれない。
ケイシーの叔父
ケイシーが父親を亡くした後、彼女の面倒を見る。勘が良い方は彼がどんな人間かもう分かるかも知れない。
誕生日パーティー
クレアの誕生日パーティーに呼ばれたケイシーはバスで帰るとクレアの父親に伝える。しかしクレアの父親は車で送って帰ると説得し、渋々ケイシーは父親の車に乗り込む
ケイシーとクレア、そしてマルシアが車に乗り、父親が荷物をトランクに詰め込もうとした隙に事件は起こる。父親はケヴィンという男に襲われ、3人は睡眠スプレーで眠らされ誘拐されてしまう。
地下室
監禁された3人。これから彼女達はケヴィンの8つの人格を目撃することになる。それにしてもケイシーの落ち着き払った態度。その理由は作品後半で明らかに。
多重人格
劇中で登場する人格は主に8つ。
- 潔癖症のデニス(誘拐犯)
- ファッション好きなバリー(社交的)
- パトリシア(女性)
- ヘドウィク(9歳の子供)
- ジェイド(糖尿病患者)何故か彼だけインシュリンが必要らしい
- オーウェル(歴史家?歴史マニア)
- ケヴィン(元の人格。別の人格に支配されていた数年間の記憶はない)
- ビースト(24人目の人格。性格は凶暴、肉体的に優れ壁をよじ登り、その肉体は至近距離からのショットガンの弾さえ貫通しないチート。正に猛獣)
彼女はパトリシア。唯一の女性人格。自分で切ったパンの切り口が曲がるとキレ出すちょっと怖い人。
彼はヘドウィク。9歳の子供。窓際にあるラジカセでCDを掛けて踊るのが好き。踊りはちょっと不気味。実際ケイシーも引いてしまう。トランシーバーを盗んだり頭は良い。
カウンセリングを受けるバリー。しかしバリーは既にデニスに主導権を乗っ取られ、バリーの振りをしているだけだった。それに気付くフレッチャー先生。
二人はそれぞれ地下からの脱出を試みるも失敗。この後別々の部屋に監禁されてしまう。これパンチラしてるよね?
子供であるヘドウィクを騙し、彼が隠してあったトランシーバーで助けを求めるケイシー。しかしそれも失敗に終わる。
デニス達の罠
ビーストを誕生させたいデニス達の罠で地下室に辿り着き、監禁された少女達を見つけて驚愕するフレッチャー先生。この後彼女はデニスに睡眠スプレーで眠らされてしまう。
そして妨げる者が誰も居なくなった今、ついに「ビースト」が誕生する。
ビーストを誕生させる為、ある場所へ向かうデニス。それは駅のホーム。彼の父親が亡くなった場所。そこへ花束を置き過去と決別し電車内で変身し始める。
これは地下内で変身中のビースト。血管がヤバイ
これはケヴィンの部屋。ビーストらしき絵が。なんか食べてるっぽい
ケイシーの脱出
本当の人格者ケヴィンに会い、殺してくれと頼まれショットガンを手に入れ逃げるケイシー。
別部屋で監禁されていたクレアをケイシーが見つける。しかしこの後彼女はビーストに奥に引きずり込まれ腹を食い破られてしまう。(嗚呼)
ビーストに向けショットガンを放つケイシー。しかし変身して皮膚が固くなったビーストは2発食らっても致命傷にすらならず立ち上がってくる。本当に人間か!?
ケイシーが隠れている檻を力ずくで開けようとするビースト。口から血を流しながら鉄の檻を曲げていく。もはや人ではない
純粋
そしてこのあとビーストはケイシーの体の無数の傷跡に気付きます。それは長きに渡って虐待されてきた体の傷。ケイシーは幼少期に父親を亡くし、そのあと叔父に引き取られ性的虐待を受けていたのでした。
その傷跡を見たケヴィンは「純粋(ピュア)だ。君はピュアで助かったね」と言い残しその場を去ります。自分と同じ境遇だったケイシーを見て自身(ピュア)だと感じたのでしょう。痛みを知らない物は汚れているとも言ってました。
ケイシーは地下から助けられ地上に戻ります。そしてパトカーに乗せられ婦人警官から「家族が迎えに来るわ。叔父さんよ」とケイシーに伝えます。
その時の彼女の表情。この作品中で最も訴えかけてくる演技でした。
「叔父が迎えに来る」と聞いてあの覚悟したような、そして強張って睨みつけるような表情。叔父に仕返しをするのではと予感さえする表情です。何度も言うけど素晴らしい演技。あの表情が彼女の過去を全て物語っているのではないでしょうか。
そしてエンディングに出てくる「アンブレイカブル」で出演していたデイヴィッド・ダン(ブルース・ウィリス)
アンブレイカブルは全3部作で次の3作目にダンとケイシーと生き残ったケヴィンが出演するそうです。
正直この作品自体はマカヴォイの演技を延々と見せ続けられている感覚で、面白かったとは言い難いです。演技自体も8人の人格を明確に演じ分けられた印象は低い。女性と子供はもっと注意深く演技するべきだったと思います。
そして多重人格を演じる上での一番の醍醐味はその人格が変わる瞬間。そこにはケヴィン自身の肉体や心の苦悩苦痛は無く、どこか薄っぺらいDIDに感じて仕方がありませんでした。
むしろ引き込まれたのはケイシー役のアニャ・テイラー=ジョイの方。
幼い頃から虐待をされている設定なので、監禁されても最初から彼女は落ち着き払った演技をするのですが、それがどこか諦めているかのような表情で暗い心の闇、複雑な内面を表現していました。一体彼女の過去に何があったのか興味はむしろ彼女に向きました。
脚本もケヴィンの幼少期の回想シーンが少ないのでそれも影響しているのかも知れません。
地下に監禁されるまでが短時間でスピーディーだっただけにもっと彼自身を掘り下げる時間はあったと思うんです。
それとこの作品では光は出てこないんですね。フレッチャー先生が唯一そんな存在ですが彼女もまた毒牙にかかってしまう。それならばもっと救えない方向にベクトルを向けてもよかったんじゃないかな。
そうすれば次作でヒーロー役のデイヴィッド・ダンが活きてくる。
ただでさえ難しい解離性同一性障害というテーマ。そしてそれを売りにした映画。特に新しい発見や手法は感じられず、唯一ビーストが壁を這い登る程度でした。かなり辛口ですが「アンブレイカブル3作目」への安易な続編だったなと思ってしまう。
怖くもない、深みもない、中途半端な作品。雰囲気はM・ナイト・シャマラン。そんな映画でした。
闇は影と相性が良く、闇を自然に引き寄せるのが世の常。次作はどうなるのかは楽しみではあります。
今作を観に行く方は「アンブレイカブル」を見てから行った方が良いかも知れません。そして「ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー:リミックス」と同じく、エンドロールが終わるまで席は立たない方がいかも。
あ、ちなみにエンドロールも24に"スプリット"したのは面白いと思いました。