映画ブログ~鑑賞記録~

鑑賞した映画の紹介や感想です

日本劇場未公開作品「フェンス」(原題:Fences)D.ワシントン、V.デイヴィス(アカデミー賞助演女優賞)

フェンス

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2016年(日本未公開)

監督 デンゼル・ワシントン

キャスト デンゼル・ワシントン

     ヴィオラ・デイヴィス

     スティーブン・マッキンレー・ヘンダーソン

     ジョヴァン・アデポ

     ラッセル・ホーンスビー

     ミケルティ・ウィリアムソン

 

Fenceとは、囲い、柵や障害物を表すそうです。 

今年春のアカデミー賞授賞式の時からずっと見たいと思っていた作品が

先日WOWOWでやっていたので観ることができました。

「フェンス」とはどんな作品か。元々は舞台作品で数々のトニー賞を受賞してる作品なんだそうです。

それを映画化したわけですね。


6月7日『フェンス』ブルーレイ&DVDリリース

 

作品的には暗い内容なんですね。

家族愛と確執と人種差別と自由と。

なぜ日本で未公開なのか分かりませんが、近年マーベルやディズニーやコミックの映像化作品が目立つように

興行収入的に「儲からない」と判断されたのでしょうか。

作品のトーンとしては、やはりアカデミー賞作品賞を受賞した「ムーン・ライト」と変わらない

むしろそれよりは明るい内容なんですけどね。

あっちは人種差別とLGBTを扱った、もっと息苦しい作品でした。

 

eiga-blog.hatenablog.com

 

ストーリー

舞台は1950年代ピッツバーグ。まだ人種差別が当たり前の時代

デンゼル・ワシントン演じるトロイはゴミ収集車の仕事をする一家の大黒柱。

ヴィオラ・デイヴィス演じる妻ローズ。

夫を常に支え、子供達を愛し一家は愛に包まれているかのように見える。

一家に大きな大木の様に君臨する主トロイ。

しかし彼は自身の差別された過去から次男コーリーの成長と向き合う事ができず、次男を家から追い出してしまう。

トロイとローズと次男コーリーと、演奏者を目指し定職に就かず小遣いをせびる長男ライオンズ

そして第二次大戦で頭部を負傷し、奇怪な行動を繰り返すトロイの兄弟ゲイブ

こんな家族を切り抜いた作品です。

 

キャスト

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トロイデンゼル・ワシントン

一家の大黒柱。少年期から親と離れ、不幸な人生を歩んだが

二人目の妻ローズと出会い人生を変える。

元黒人リーグの野球選手で成績優秀だったにもかかわらず

黒人だったためにメジャーに行くことが出来なかった。

その苦い過去を、大学からスカウトが来る程のフットボーラー次男コーリーにぶつけて

チャンスを握りつぶしてしまう。

ゴミ収集車の仕事に就いているが家計は貧しい。

 

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妻ローズヴィオラ・デイヴィス

夫を愛し、子供達を愛する献身的な妻。

人生のすべてをトロイに捧げてきた。

しかし胸の内は本人しか知らず、夫トロイの暴君的な態度と

子供達との板挟みになり苦悩していたのだった。

彼女が泣きながら、トロイに悲痛を訴えるシーンは作品中NO1の演技。

 

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コーリー(ジョヴァン・アデポ)

夢はNFLの選手。

高校のフットボールチームに所属し、大学からもスカウトが来る

シーズン中はバイトが出来ない事を父トロイに許して貰えず

スカウトも勝手に断られ確執は取り返しがつかない所まで深まる。

父と解り合える日は来るのか。

 

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ガブリエル(ゲイブ)(ミケルティ・ウィリアムソン)

トロイの弟。

第二次大戦中、沖縄で頭部を負傷し

それにより奇怪な行動を繰り返すようになる。

何度も警察に捕まり、その度にトロイが骨を折って釈放させている。

しかし、家族で唯一「フェンス」に囚われていなかった彼は

最後にささやかな奇跡を見せる。

胸を打つ素晴らしいシーンだった。

 

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ライオンズラッセル・ホーンスビー)

トロイの長男。母親はローズではないらしい。

定職に就かず演奏家を目指す。

小遣いを父にせびに来る時だけ実家に顔を出す。

トロイとは仲が悪いが弟思いでもある。

 

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ボノ(スティーブン・マッキンレー・ヘンダーソン)

トロイの親友。少年期からの仲で同じゴミ収集車で働く。

気のいいおじさん。

最後は妻に冷蔵庫を買い与える事が出来てホッと胸をなでおろした。

 

感想

邦題は「フェンス」なんですが原題はFences(複数系)なんですね。

その原題が表すように、(むしろ原題が素晴らしい)

トロイを始め

ローズやコーリー、ライオンズや友人のボノまでもが

様々なフェンスに囚われていて

それを描いた作品でした。

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トロイは自分の過去と成功しなかった現実に囚われていたし

ローズはトロイに全てを捧げたにもかかわらず、実は自分の居場所は無く

逆らえない夫にずっと囚われていました。

次男コーリーはもとより

長男ライオンズも一見自由な身であるようですが

やはり夢叶わず、まっとうな道を歩む事が出来なかった。

そんな中、頭部を負傷し奇っ怪な行動と言動を繰り返すゲイブだけが

戦争に参加し、負傷した過去や今の姿に囚われる事無く

自由な心を持ち続ける事ができたのは

皮肉としか言いようがありません。

しかし、その彼だからこそ

最後に奇跡とも言えるシーンを作り出す事が出来たのは

誰の目にも明らかでしょう。

 

作品最初は長台詞のオンパレードで面を喰らいました。

しかし中盤から雰囲気が変わり、後半に向けて複雑な人間模様を描いて行きます

ここには書いてませんが、「えっ」と驚くような出来事も起こります。

生きてる限りは何かに縛られ、何かに囚われる事も人生にはありますよね。

でも最後は少しホッとさせてくれる、そんな作品でした。

さあ、日本劇場未公開作品「Fences」

一度は見てみても損は無いのではないでしょうか。

 

見る人によってはトロイが憎くてしょうがないかもしれません。

しかしバットを振って倒れた時に「笑っていたような気がした」

という台詞を聞いた時に

彼なりに一家を支え続け、それをやり終えたのだなと。

そんな風に思いました。

 

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