「リリーのすべて」(原題:The Danish Girl)
リリーのすべて 2015年公開
【リリーのすべて】(20015)
監督 トム・フーパー
キャスト エディ・レッドメイン
アリシア・ヴィンキャンデル
そろそろアカデミー賞の時期ですね。今年度はラ・ラ・ランド旋風なのでしょうか。
昨年のオスカーで話題だった「リリーのすべて」
原作は実在した人物のリリー・エルベの伝記 The Danish Girl
今日はその紹介です
トランスジェンダー
トランスジェンダーという言葉をご存知でしょうか?
自分はこの映画を観るまでその単語はおろか意味もよく知りませんでした。
トランス(Trans)には乗り越える、向こう側、超越する(トランス状態のTranceとは別語だそうです)
ジェンダーには性という意味があるようで、
性を越える、向こう側の性などの意味があるようです
日本では性同一性障害という単語が一般的ですが、トランスジェンダーとはもっと広義的な性を指してるようで
異性愛者、同性愛者、両性愛者、全性愛者あるいは無性愛者など多種多様な性を含み
少なくともこの作品の主人公アイナー・ヴェイナー(リリー・エルベ)は生まれて与えられた性と心の性が一致していない男性です。
舞台は1926年デンマークのコペンハーゲン。だから原題がThe Danish Girlなんですね。
※監督はトム・フーパー「英国王のスピーチ」「レ・ミゼラブル」
登場人物
※アイナー・ヴェイナー、リリーエルベ(エディ・レッドメイン)
中性的な容姿を持ち、コペンハーゲンの画廊達も認める才能ある風景画家
そして愛妻家でもある
ある日、妻にバレリーナの脚のモデルを頼まれドレスを着せられる
しかしその日を堺に眠っていた本当の自分に気付いてしまう。その後夫であることを止めリリーと名乗るも
妻を愛し夫で居続けたい自分(アイナー)と本当の自分(リリー)に葛藤し、苦悩する
世界で恐らくいちばん最初に性別適合手術を受けた人
※ゲルダ・ヴェイナー(アリシア・ヴィキャンデル)
アイナーの妻。女性の裸の絵も書く肖像画家
倒錯的で奔放な性格。変わっていくアイナーを心から愛し苦悩しながらも常に支える
夫とは対象的に当初彼女の描く絵の評価は低かった
※ハンス・アクスギル(マティアス・スーナールツ)
アイナーの旧友。パリで画商を営んでおりアイナーとは幼馴染み
ゲルダに出会ってからは密かに想いを寄せる
この映画には好きなセリフがあります
アイナーが描くヴァイレの沼地(幼少時の故郷の風景)を見たゲルダとのやり取りです
ゲルダ「この絵を見ていると吸い込まれそうだわ。あの凧の様にこの沼地に沈んでしまいそう」
アイナー「ハンスの凧だね。大丈夫、沈んだりしないよ。だって沼地は僕の中にあるから」
キザなセリフですが二人は笑ってサラッとやり取りします。
印象的でとても好きなセリフです。
アイナーとゲルダ
アイナーは妻を愛しています。そしてゲルダも夫を心から愛しています。
しかしアイナーが本当の自分に目覚め、男と密会するようになり、キスをし、自宅でも女性の格好をしたまま過ごします。
ゲルダを愛しているけどリリーとして生きたいアイナー
妻ゲルダもその容姿と心の変化を苦悩、困惑しながらも受け入れていきます。
そして開放されたアイナーの影響を受ける様にゲルダの描く肖像画も変化(開放されて)していきます。
夫婦関係とは裏腹に評価され始めるゲルダの肖像画。皮肉なシーンです
そしてあれだけ何度も描いたヴァレイの沼地。なぜアイナーは描くのを止めてしまったのでしょうか?
恐らく自分の中にある抑圧した感情が開放された事により、故郷を描く必要が無くなったのでしょう。
自身に目覚め、リリーとして生きたいと渇望するアイナー。
夫が夫でなくなっていく。その現実に傷付き、でも献身的に支えるゲルダ。
そしてそんな彼女にそっと寄り添うように支えるハンス。
そんな複雑な夫婦関係と「良い距離感」のハンスが観客の心を揺さぶります。
物語の後半はもっとショッキングにそしてシリアスに展開します。
精神病と診断され監禁される前に脱出する場面もあります。1926年当時なら仕方がない時代なのでしょう。
しかしリリーのその心は最後、ヴァレイの崖の上で空高く飛んでいったスカーフの様に永遠の自由を得たのでしょう。
永遠に。
良いラストだなと心から思いました。